【藤・ふじ】
藤はマメ科の植物です。万葉集では26首に藤の花が詠まれています。文様としては有職文様として公家の装束に多く織り込まれました。藤紋は大化の改新以降、貴族社会を支配して最大の氏族となった藤原氏を象徴する家紋です。しかし藤原氏の嫡流と云われる近衛家は牡丹紋を用いていました。江戸時代の公家で見てみると、藤原系の公家97家の内で藤紋を用いるのは、わずか7家と一割にも足りません。九条流の藤原氏は藤紋を用いていますが、九条家も元々は牡丹紋を用いていましたから、公家の藤原一族は、当初ほとんど藤紋を使っていなかったということです。 むしろ藤紋は藤原氏の家系図から分かれ、遠く離れた子孫たちが、自分たちが藤原氏の子孫であることを示すために用いることが多かったようです。 武家では前九年の役(1051~1062)を描いた『前九年合戦絵詞』の中に、安倍宗任を守る楯に藤巴が描かれているのを見ることができます。また名字に「藤」の文字を用いる家で使用されることが多いようです。 藤は美しい紫の花房を垂れ下げますが、「下がる」という言葉が運気を下げることに繋がるとして、不自然ながらも下から上に花房を描くこともあります。藤原氏の繁栄を物語るように多く用いられる家紋です。 |