【松・まつ】

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【松・まつ】


 松紋はマツ属の中のクロマツやアカマツ、カラマツなどを象った家紋です。中にはその枝葉だけの姿や、松毬(まつかさ)を象ったものもあります。中国では古くから寒さの中で花を付ける梅と、冬でも常に緑を保つ竹と松をあわせて『歳寒の三友』といい、清廉な文人の人格を表しました。いわゆる「松竹梅」です。

 中国の六朝時代(222~589)には、神仙思想の中で松は鶴とともに長寿を表すデザインとして愛好されました。日本でも、平安貴族は旧正月の初子の日に千代を祝う小引松という遊びが行われ、鶴が若松の小枝をくわえた松喰鶴文様が、吉祥的な文様として盛んに描かれました。

 また学問の神様と云われる菅原道真(すがわらのみちざね)が、太宰府に左遷された時に、道真に可愛がってもらった梅と松が、後を追って飛んでいったという伝説があり、菅原一族の中に多く梅紋と松紋が用いられています。また讃岐国(香川県)発祥の綾氏からでた一族、伊豆国(静岡県)から発祥した天野氏の一族で多く松紋が用いられています。それからなによりも名字に「松」の文字を使う家々で松紋は使われています。家紋としては、一族の長寿を祈念した瑞祥的意義によって用いられたと考えられます。

 全国的に多い家紋ですが、特に多くの支族を出し裾野を広げた綾一族の分布に比例し、香川県を中心とした四国に多く、また東海地方にも多く見られる家紋です。