【鱗・うろこ】
鱗紋は龍や蛇のウロコを正三角形、あるいは二等辺三角形を連ねた形をした家紋です。主に下に2つ、上に1つ重ねた姿で描かれます。文様としては単純な構成であることから古代から世界各国に見られる造形です。日本では魔除けの力があると考えられて、古墳の壁画装飾などにも見ることができます。 鎌倉幕府執権として権勢を振るった北条一門の家紋として有名です。『太平記』には北条氏がこの三つ鱗紋を定めた経緯が描かれています。ある時、北条時政が一族の繁栄を願って江の島に参籠しました。するとその37日目に美しい女が時政の前に現れ、子孫は七代まで栄えると告げると大蛇となって海中に消えました。見るとそのあとに3枚のウロコが落ちていて、時政はそれを拾って旗の紋にしたと云うことです。現在も江の島にある江島神社は、浪と三つ鱗を併せた形の紋を御神紋としています。 戦国時代に伊豆・相模国へ進出した伊勢氏は、鎌倉北条氏の事蹟を引き継ぐ意思を示して名字を北条に改めて家紋も三つ鱗紋を使いました。 他に大和国の大神(おおみわ)氏一族が用いた家紋として有名です。大神神社の御神体の三輪山には大蛇伝説がありますので、そこから三つ鱗紋が用いられたのだと思います。大神氏の子孫で九州に勢力を持った緒方氏も『平家物語』に蛇の伝説が書かれています。 大神氏族緒方氏の本拠だった大分県にもっとも多く、隣接する福岡県。そして北条氏の本拠だった神奈川県に多く見られる家紋です。 |