【井筒、井桁・いづつ、いげた】
井筒・井桁紋は、井戸の枠を家紋にしたものです。しかし本来は紋形が先にあり、似ている井筒や井桁の名称を借りてきたものだろうと思います。 建造物としては井戸の地上部分を囲むように組まれた井の字型の木組みです。能の演目として傑作との評価がある『井筒』は有名ですが、舞台装置として組まれた井筒とススキが登場します。 一般に正方形のものは井筒、菱形のものは井桁と云いますが、大名の井伊家では、正方形の紋形を井桁と称しているところを見ると、元々はあまり区別されていなかったのかも知れません。 井伊家では、室町時代の頃から家祖の井伊共保に、井戸とその脇に植えられた橘にまつわる出生譚があります。そしてその井戸枠から生み出されたのが井伊家が用いる井桁紋というわけです。しかしながら室町時代の井伊家の家紋は、筆勢で書いた井の文字を家紋としていますから、残念ながらこの逸話は作り話のようです。それを裏付けるように、やはり名字に「井」の文字を含む家が圧倒的に多く使う家紋です。 |