職人 石塚登一郎







職人 石塚 登一郎
彫銀の製品に生命を吹き込むための切削工具。

回転するモノや前後に動かすモノ全てを総称して刃物と呼ぶ。

代々教え継がれて来た刃物作りは、古の名人達の知恵の宝庫と言える。製品の良し悪しはひとえにこれらの工具の切れ味に掛かっている。

先代斎藤安次郎が現在も使うキサゲと呼ばれる特殊工具の研ぎ方に、その鋭い切れ味の道理が集約され、 この道60年の今でも毎日の手入れは怠り無くその仕事の速さはもはや生きる伝説となりつつある。

傍らで静かに控える石塚登一郎が、刃物を研ぎ始めると何とも不思議な空間を現出する。

当人いわく「芯が見える」らしい。

どうやら超高速で回転させるための工具の回転芯が、研ぎの最中にキズミと呼ばれる簡易ルーペを通して視認出来るとか。
(たしか、これは100倍レベルの顕微鏡の分野のはず)

この宇宙を感じさせるような持論は、彼が家族よりも長く刃物と付き合って来た長い経験を証拠づけている。
■カッターグラインダー

刃物を研ぎ澄ます、カッターグラインダー。
刃に当てる磨ぎ石は、ダイヤモンドホイールといい、ダイヤの粉を固めたものを使用。




■キサゲ

現在も使うキサゲと呼ばれる特殊工具の研ぎ方に、その鋭い切れ味の道理が集約される。
■キズミ

研ぎの最中に使用する、キズミと呼ばれる簡易ルーペ(100倍レベルの顕微鏡)。 このルーペを、石塚氏が覗くと「刃物の芯」が見えるという。