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【蔦・つた】

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【蔦・つた】


 蔦はブドウ科の蔓性植物で、木や岩に着生して秋には美しい紅葉となります。『太平記』には公家正親町忠季(おおぎまち・ただすえ)が着ていた襖(あお)という衣裳に蔦文様があったことが書かれています。能装束や辻ヶ花にも蔦をデザインしたものが見られます。

 蔦紋は非常に多く用いられる家紋なのですが、実はその成り立ちは明らかになっていません。貴族で蔦紋を使う家はなく、御印(おしるし)として日野西家が用いるのみです。一方で室町時代の記録『見聞諸家紋(けんもんしょかもん)』には、椎名氏、富田氏、高安氏が蔦紋を用いていたことが書かれていますから武家の間で起こった家紋なのでしょう。

 江戸時代は徳川家の母体とも言える松平家が、主家徳川家をはばかって蔦紋に替える家がありました。

 蔦は簡潔で優美な紋であり、また他の器物に着生して生長してゆくことから、女紋として使われることも多かったようです。北陸周辺の日本海側の富山・石川・新潟県にに非常に多く見られる家紋ですが、これは鎌倉時代から越中国(富山県)に勢力を振るった椎名氏が用いた家紋だったからでしょう。

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